■禅林の文学 | |||||
「偈頌の総集」「詩の総集」に関する基礎研究 | |||||
朝倉 尚著 | |||||
中世禅林においてなぜ「偈頌の総集」と「詩の総集」が編まれたのか。その成立過程と実態を明らかにする。 はしがき 総 序 「書」に対する態度 第一部 偈頌の総集 (『新撰貞和分類古今尊宿偈頌集』〈略称「新撰貞和集」〉と『重刊貞和類聚祖苑聯芳集』〈略称「重刊貞和集」〉) 第一章 義堂周信の存在証明 ―五山版『新撰貞和分類古今尊宿偈頌集』『重刊貞和類聚祖苑聯芳集』の刊行をめぐって― 第二章 五山版『新撰貞和分類古今尊宿偈頌集』考 ―「大日本仏教全書」所収本文の補完をめぐって― 第三章 『重刊貞和類聚祖苑聯芳集』考 ―「大日本仏教全書」所収本の性格をめぐって― 第四章 『新撰貞和分類古今尊宿偈頌集』から『重刊貞和類聚祖苑聯芳集』へ 付 章 義堂周信『空華集』諸本の性格 第二部 詩の総集 第一章 受容の実態と編纂意図 第二章 編纂過程・収集源をめぐって 資料篇 勅版『錦繡段』(古活字版・慶長二年刊)翻刻 『続錦繡段』(古活字版)翻刻 あとがき 索 引 朝倉 尚(あさくら ひさし)……広島大学名誉教授 鈴峯女子短期大学学長 令和三年逝去 |
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ISBN978-4-7924-1490-0 C3091 (2024.4) A5判 上製本 604頁 本体18,000円 | |||||
本書の概要 |
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広島大学大学院人間社会科学研究科准教授 太田 亨 |
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著者は、これまで一貫して禅林の文学(五山文学)における観念的世界の展開(博引旁証)について考究している。 禅僧は、禅林に入門した当初より熱心に観念的世界の形成に努め、それが生涯にわたったはずである。その際に、個別の題材ごとに博引旁証の対象となる用例と詠出法(表現)が示された模範を見て学習したと考えられる。その模範となるのが「偈頌の総集」と「詩の総集」である。本書では、中世禅林において「偈頌の総集」と「詩の総集」が編まれた成立過程とその実態、現代の研究者がそれらを利用するに当たっての注意点を詳述する。 第一部では、「偈頌の総集」として、義堂周信が編んだ『新撰貞和分類古今尊宿偈頌集』(略称「新撰貞和集」)と『重刊貞和類聚祖苑聯芳集』(略称「重刊貞和集」)を対象とする。まず、五山版「重刊貞和集」の原稿が完成・刊行されるまでの経緯を紹介し、義堂周信の生涯が「貞和集」に始まり、「貞和集」に終わっている様相を示す。義堂自らの存在証明と言える「貞和集」であるが、現在、「大日本仏教全書」に所収される「新撰貞和集」と「重刊貞和集」は利用されているとは言い難い。そこで、大日本仏教全書所収「新撰貞和集」に存する不備・脱落丁を補完した上で、「新撰貞和集」と「重刊貞和集」の底本の選定・作品数・部類・詩型・重複詩数・各版との比較を行い、書誌事項を詳細に調査する。両書の実態が明らかになったところで、渡来僧の無学祖元と清拙正澄の作品が、両書にどのように入集されているかを調査し、その特徴と原因について論じる。 付章では、義堂周信の著作集『空華集』について言及する。現在容易に利用できる「五山文学全集本」は、不分巻である五山版を再構成して二〇巻本に編成した元禄九年刊版本を大略底本としている。三書の成立・内容・相違点を調査・検討し、「五山文学全集本」の処遇について、著者の見解・評価を述べる。 第二部では、「詩の総集」として、天隠龍沢編『錦繡段』・月舟寿桂編『続錦繡段』と、両書の収集源をなした江西龍派編『新選分類諸家詩巻』・瑞巌龍惺等編『続新編分類諸家詩集』を対象とする。まず如月寿印編『中華若木詩抄』と四書の関係について、その入集の実態を明らかにし、『錦繡段』『続錦繡段』の作者名表記と詩題表記の異同を分析することで、主たる収集源が『錦繡段』『続錦繡段』であることを確認する。次いで四書に存する序・跋から、四書の成立事情と相互の影響関係を明らかにし、その上で、複数の集に共通して収められる作品間の作者名と詩題の表記を精査・分析し、その結果に見られる特徴と原因について論じる。また、四書に見られる特徴と傾向は、中国で成立してむしろ本朝禅林を中心に広範に流布した『三体詩』の作者名表記にも既に見られることを検証する。 上記の総集作品について、これからの研究者が積極的に活用できるように、その基礎事項・留意事項を明らかにしたのが本書である。そこには、今は亡き著者の五山文学研究の「礎」の役割を果たしたいとの願いが込められている。 詳しくは本書をお読みいただき、忌憚のないご意見を賜りたく存じます。 |
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |