■「河内学」の世界 |
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大阪経済法科大学 河内学研究会 編 | |||||
河川が造りあげた国という特徴を備える「河内国」。河内地域の自然と歴史・遺跡などを「川」とのかかわりに注目しながら紹介する。 ■本書の構成 「河内学」のこと……浅見 緑/橋本 久/前田晴人 河内の自然と環境保全……加納義彦 一 高安地域の自然環境と地場産業 二 高安地域の問題点 三 里山林とため池保全 四 里地里やまの環境保全 いかにして実践するか ―グローバル(地球規模)に思考し、ローカル(地域)で実践する ― 五 高安自然再生協議会について 河内平野の遺跡 自然環境の変化と人々の暮らし ―中河内の遺跡を中心にして― ……桑原武志 はじめに 一 河内平野の旧石器時代 二 河内平野の縄文時代 三 河内平野の弥生時代 おわりに 古代の河内と継体天皇……前田晴人 一 継体天皇の謎 二 継体天皇の系譜について 三 ヲホト大王の陵墓について 四 ヲホト大王と河内の馬飼集団 五 筑紫君磐井の反乱 物部氏と蘇我氏 ―丁未の乱をめぐる遺跡と古墳― ……米田敏幸 一 物部氏について 二 蘇我氏について 三 丁未の乱 四 その後の物部氏 五 物部氏に関する遺跡 まとめ 高安城と古代山城 ―国防策の推移とともに― ……棚橋利光 一 天智天皇時代 二 天武・持統朝から文武時代へ 三 平城遷都と国防策 四 聖武・孝謙(称徳)天皇時代 久宝寺寺内町の歴史と地理……金井 年 はじめに 一 「久宝寺」という名の由来 二 蓮如上人の布教と寺内町の成立 三 寺内町の形成 四 町のかたち 五 寺院と町のメイン・ストリート・地蔵堂について おわりに 近世河内の水環境 ―大和川を中心に― ……市川秀之 はじめに 一 付け替え以前の中河内と治水 二 農業用水の変化 三 舟運の変化 おわりに 近鉄八尾駅周辺における大型店の立地変化と中心商店街の変容……安倉良二 はじめに ―新旧の駅をはさむ商業地域― 一 近鉄八尾駅北側における大型店の立地変化 ―近鉄八尾駅前土地区画整理事業との関連で― 二 中心商店街(ファミリーロード)の変容と「まちづくり」の取り組み 三 中心商業地における大型店と商店街の「すみ分け」の可能性 ―むすびにかえて― 関連書籍 前田晴人著 女王卑弥呼の国家と伝承 前田晴人著 古代王権と難波・河内の豪族 前田晴人著 飛鳥時代の政治と王権 前田晴人著 古代女王制と天皇の起源 棚橋利光編 四天王寺古文書 第一・二巻 棚橋利光編 四天王寺史料 市川秀之著 歴史のなかの狭山池 山口之夫著(福島雅蔵・市川秀之編) 河内木綿と大和川 |
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ISBN978-4-7924-1040-7 C3021 (2015.5) A5判 並製本 192頁 本体2,800円 | |||||
『「河内学」の世界』刊行に寄せて |
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編集委員代表・教養部客員教授 前田晴人 |
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大阪経済法科大学教養部では春学期の一般教養講義科目のひとつに「河内学」があります。「河内学」は二〇〇二年度春学期に初めて本学一般教養科目のひとつとして開講され、昨年度までに十三年間の実績を積んだ経緯を有しています。オムニバス式講義の形態をもって、本学の教員を軸に河内地域のさまざまな問題を研究している地元の専門家を招き、考古・歴史・地理・自然環境・文学・民俗・宗教・地域政策・産業など多岐・多分野にわたるテーマで講義を展開するほか、さらに本学の立地を十分に活かし、自然と遺跡・地域の文化に直接触れるという主旨から、学外での活動にも積極的に取り組むようにし、(公財)八尾市立歴史民俗資料館とも連携しながら体験学修を行い、地域・郷土の歴史、文化、産業、自然環境、現代生活を幅広く学べる場を提供してきました。一昨年度四月からは八尾キャンパスが新たにオープンしたことを契機として、一般市民にも広く門戸を開放し、大学の地域社会への貢献を担う方向で「河内学」の将来的発展を期しているところです。 そのようななか、毎回の講義では担当者が作成するレジュメや資料がその場限りで終わってしまっている現状と、各講義担当者の講義内容の質の高さやその社会的な意義を考えますと、講義の中身を何らかの形で学生や地元に還元する必要があるという想いと、特に学生諸君が「河内学」を自宅においてより身近に学べる教材としての教科図書を作ることが重要であろうという発想から、今回、最近の講義担当者諸賢と学内外の専門研究者に依頼し、それぞれの専門的研究の論考を理解が容易な表現形式と内容とで原稿に書き下ろしていただきました。各論考には豊富な図版・写真・表を付帯しており、それぞれの研究内容の理解と印象づけを促進できる工夫を施しています。さらに、本書を単なる地域学の学習図書としてだけではなく、「河内」という近畿の枢要地域に広く関心と興味を懐く人々に対しても本書を提供することにより、今何がそれぞれの地域の喫緊の課題になっているのか、何を後世に遺していけばよいのか、我々は今後地域に対してどのような対応をなすべきかを考えるための有効な素材にしたいと考えており、各論考はそのような大切な問題をそれぞれ正面から検討し考察したものになっていると思われますので、関心をお持ちの方々にはぜひご一読をお願いいたします。 |
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※所属・肩書き等は、本書刊行時のものです。 |